世界でいちばん 不本意な「好き」



気まずい空気が流れる。

どうしてこんな話になっちゃったんだろう。


ぐちゃぐちゃになったお弁当の中身が、なんだかわたしみたいで気持ちわるい。


「お弁当、俺の食べて」

「いい。ふみとがおなか空くでしょ。隣でぐーぐーおなか鳴らされても気が散る」


言いかた、かわいくない。お礼くらい言えないの?

なんでこんなに意地を張っちゃうんだろう。


「じゃあはんぶんにしよ」

「……」


なんで引いてくれないの。

しかたなくたまご焼きをひとつつまむ。ふわふわでおいしいから癪だ。



「…強い言いかたしてごめん」

「や、俺も、口出ししすぎた」

「それは100歩譲るけどどさくさに紛れて本名で呼ぶのはやめて」

「バレた?」


本当に悪そうに思っていそうな顔でおどけられたらこれ以上文句言えないじゃない。


へんなひと。後から反省してくれるなら最初から言わなければいいのに。

ふたりで分けるには少ないお弁当が、くるしい。
口出ししすぎた、なんて言うけど、なんであんなこと言ってきたんだろう。


どうせ、ふみとにはわかるわけない。

わかるように言うつもりもない。



無言で食べた。食べ終わった。


今のってけんかに入るのかな。一応、謝り合ったけど、どうなんだろう。いつになく静かだからしゃべりかけにくい。


そろそろ戻ろうよ。

と目で訴えようとしたら、ふみとの視線の先が別のところに移ったのがわかった。


つられて振り向くとちょうど音彩先生が音楽室に入ってくるところだった。