世界でいちばん 不本意な「好き」



いつもより近い距離に、なんとなくの居心地のわるさを覚える。

関わらないようにって思っているのにどうしてかこうなる。


「アリスはブラピの作品で何が好き?」

「1番はオーシャンズ11。2番がマネーボール、3番がベンジャミン・バトン」


すかさず答えるとなぜか笑われた。


「アリスは絶対にランキング付けてると思った」

「なにその予想…なんかいやだ」

「俺も付けてるよ。1番がファイト・クラブ、2番がトロイ、3番は俺もベンジャミン・バトン。でもキャラクターはジョー・ブラックが好きだな」

「あ、ザ・恋愛ものは見てない」

「徹底してんなー。案外いいもんだよ?海外のはロマンもあるし」

「それが苦手なの」

「…あ、はなきみは見てくれたって言ってたよな。どうだった?」


まだ久野ふみとを認識する前、汐くんと観に行った恋愛映画。

あっこは5回も行ったって言ってたっけ。


ベストセラーになった恋愛小説が原作でもともとタイトルは知っていた。観に行くつもりは、これっぽっちもなかった。



「……エンディングで未来を約束するシーンがあるでしょう。おれたちもこうなれたらいいねって、汐くん、笑って言ってくれた」


好き、をたしかめられた。
それだけで、見てよかったって思えた。


「だけどそううまくはいかないもん。だからやっぱりフィクションは苦手だよ」


都合よく作られたハッピーエンドの世界。

お互いが唯一無二になれて、かけがえのない存在になれる、夢みたいな物語。そんなの現実では簡単に起きっこない。


「それが良いって人もいるだろうから存在の否定はしないけど」


汐くんは元気だろうか。

あの図書館はまだ使っているだろうか。相変わらずヒロサラを愛読してるのかな。


もう、新しい恋はしてるかな。