世界でいちばん 不本意な「好き」



そのかわり入学時の成績を3年間保持することが絶対条件。もともとさほど厳しくない校則をしっかり守ることも必須。


「全教科90点以上とかアリスすげー…」


だからテストの順位は常に学年上位をキープ。全教科90点以上をとることが最低限の目標だ。

廊下に貼りだされた順位、それから配られた点数表を見た隣の席の久野ふみとは驚いた様子でこっちを見てくる。


「特待だから成績落として取り消されたらまずいの」


貯めてるけど学費なんてとても払えない。


「へー…えらいなあ」

「…べつに、自分で決めたことだから守らないと」


えらいなんてことない。くだらない意地みたいなものだ。


「あ。そういえば、ブラピのサイン持ってるって本当?」


じとっと見ると、口にひとさし指を当ててしーっとジェスチャーを向けてくる。

わるいけどわたしはふみととちがって大きな声で話してないよ。


「テレビ放送されてたなら知ってる人は知ってるんじゃないの?」

「そうだけど。芸能人感は出さないほうがいいってアリスが言ったんじゃん」


たしかに。ブラピに会ってサインをもらったなんて職権濫用、またとやかく言われる理由になるかもしれない。


「でもアリスも好きなら話したいと思ってたんだ」

「それは、わたしも」

「じゃあ今日はお昼の時間空き教室で食べながら話そうよ」


今日は学童もないし、ふたりになれる時間はほかにない。そう思っての誘いだと思う。

ちょうどよかった。音彩先生のことも聞けるかもしれない。


「そうしよっか」

「うん」


それに、あっこたちのように熱量を持ってるわけじゃないけれど好きなものの話をできるのは、ちょっとだけ楽しみかもしれない。