「いつかハリウッドで共演したいねって話しててなんかもうすごかったです。会話がレベチです」
「…ふうん。…ハリウッドとか出てるの?」
「うーん…演技の実力はたしかなんですけどまだですね。史都の出演作品って恋愛ものが多いんすよ」
「そうなんだ」
「まあわかるんですけどね。すげーかっこいいから、漫画の実写やっても違和感ないし。原作ファンも納得するしかないというか。それってすごいことなんですけど、たぶん史都ならもっといろんな役ができるはずなので今から楽しみです」
久野ふみとが思っていることはどうやらファンにもなんとなくは伝わっていて、望まれているみたい。
自分に期待してくれる人がいる。
それをきっとあのひとは糧にできるひとだと思う。
「ピアニストの役とか良いと思うんすよねー」
…ふみとにはもうひとつ聞きたいことがあるのにそのことはなぜか聞けずにいる。
音彩先生のこと。
気づいてたなら、同級生だって言ってくれたらよかったのに。
特待生制度を使えるとしても大学に行く予定はないから、そこそこ名の通った高校を卒業した証明が欲しくてチウガクを選んだけれど私立の進学校だからそれなりに学費がかかる。
だけどチウガクの特待生は、入学金、授業料、施設費、PTAや生徒会費、寄付金、そして寮の利用費が3年間免除になって、自分で負担するのは制服代や教材費、修学旅行の費用だけ。
給食がないからその費用もとられないところもひとつの決め手だった。



