世界でいちばん 不本意な「好き」



もちろん、へーでは終わらせてもらえない。


「見てるに決まってるじゃない」

「え、ほかにはなんか網羅してるのある?」

「いや…」

「そういやアリスって他のドラマは見ないけど日曜劇場はかかさず見てたよな」


はい、いらないこと言う。付き合っていたときの記憶を全部消し去りたい。なんでいちいち覚えてるかな?


「日曜劇場ならエマが何作か出てるよ。みはくんも出たことあったな」


エマ、みはくん。あと、にーなと流とさっくん。

顔はわからないけど名前だけはちょっと覚えてきたピカロのメンバー。


「そうなんだ。知らなかった」

「ふたりとも演技上手いからアイドルって気づかない人も多いんだよな」


そういうことを言いたいわけじゃなかったのにうれしそうにメンバーを褒めるから何も言えなくなる。本当に、好きなんだな。

ずっと同じことをやってきたひとたちが傍にいるってどういう感覚なんだろう。


ピカロって、どういうアイドルグループなんだろう。



「ふみとは出てないの?ドラマとかけっこう出てるんでしょ」


たしかあっこがそんなようなことを言ってた気がするんだけど、ちがったらどうしよう。


「あー…俺は出たことないや」



─── 彼の表情が陰ったところ、初めて見た。



すぐに笑って「アリスが見てくれてたかもしれないのに残念」とつぶやく。ねえ、うまく笑えてないよ。

なにか悪いことを言っただろうか。


「日曜劇場は恋愛もの少ないもんね!」


あっこが褒めるようにちから強く言ったせりふに、ふみとはまたぎこちない笑みを返していた。