世界でいちばん 不本意な「好き」




「そうだ。チケット4枚あるからアリスとショーマも行く?」

「えっ」


まさかこっちに話しが振られるとは思っていなくてすっとんきょうな声が出てしまった。

内容も気持ちもわからなすぎてぼうっと聞いてた…え、なに、わたしたちもピカロのコンサートに行くかって?


「いいの?ならおれ行こうかな」


うそでしょ?

という目で見ていたのか、ショーマはこっちを見て「楽しそうだし」と笑う。


なんだか裏切られたような気分になるのはまた勝手な話だ、と我慢する、けど、でも。



「わたしは行かない。興味ないもの」


本当は言いかたを考えて返事をしたほうがいいのかもしれないけど…ふみとが!行くよね行くよね行っておいでよ、みたいな期待の視線を向けてくるからつい…!


「えー行こうよお」

「えー行っておいでよお」

「ちょっと、あっこの言いかた真似しないの。きもちわるい」

「グサッ」


調子にのらないでほしい。こっちはべつに仲良しこよしな会話をするつもりはない。


「アリスって好きな芸能人いないの?いたほうが人生楽しくね?」


すでにいないと決めつけて信じられねえって顔で見てくる。さっきの表情とはえらい違いだ。

いたほうが楽しい、って。いない人に失礼だ。



「いるよー」


そう答えたのはわたしじゃなくあっこだった。


「アリスはね、ブラピとお笑いの千鳥が大好きなんだよね」


まちがってはいないけど…また、ふみとに言ったらうるさそうだから知られたくなかった。


「え!俺も大好きでブラピの作品は全部見てるよ」

「へー」

「アリスは?」