世界でいちばん 不本意な「好き」



へんてこな発言。見覚えのある顔。聞き覚えのある声。…高校に復学するという、あの会見で言っていた言葉…。


いや、まさか。


だって、芸能人なんて、そうそういるものじゃないでしょ。ファンタジーに近いってわたしは思ってる。

このまえ汐くんと観た映画を思い出して、やっぱり、似てる、と思うと心臓がばくばくと動いた。



「あの…はなきみ、の、主演だった人に似てるとか、よく言われたりする…?」


そんな人この学校にいたらあっこが黙ってないと思うけど、一応確認。

問いかけると彼はきょとんとした顔で「花くん役は俺がやらせてもらったよ」と言った。


似てる、というか、同じ。



──── 久野史都だ。


え、なんで…なんでこんなところにいるの!?わたしの隣の席。なんで!?


幻覚かな…それともそこだけ時空が違う?わたしの目がおかしいの?やばいのかな…病気かな…紗依たすけて!


紗依は大きな私立病院のお医者さんと看護師さんの娘。わたし、へんになったかもしれない。

たすけを求めて窓際を見ると、彼女は目をまるくしてこっちを見ていた。


紗依だけじゃない。クラスのみんながこっちを見てる。正式に言うとわたしの隣の席の人物を。


みんなにも見えてるんだ…わたしがおかしいんじゃない。

いやでも…芸能人が…しかもただの芸能人じゃない。まったく興味のないわたしでさえ知っている、海外進出もしていてメンバー全員がドラマや映画に引っ張りだこ。テレビでメンバーを見かけない日がないって言われている、日本が誇る6人組アイドル。


そのひとり…あっこ曰く一番人気なのが、久野史都。

そんな人物が──── なんでこんなところにいるの!?