世界でいちばん 不本意な「好き」




その理由がわかったのは月曜日の朝だった。

登校しているとショーマと寧音が横に並んできて眉をひそめる。


「さっそく仲良くふたりで登校?」

「そーそー」


しかたなくイヤミの言葉をかけるとご機嫌な返事が返ってくる。なんなのこいつ。


「ちがうからね。月湖がおせっかいするから調子にのって迎えに来たじゃん」


またおせっかいって言われた。そんなつもりまったくないのに、勝手な解釈はやめてほしい。

そう言いつつまんざらでもなさそうな寧音の態度と顔面が緩みきったショーマには若干イラっとしてくる。


「でも寧音ってふみとのことが好きなんじゃないの?」


思わずいじわるを言うとご機嫌な顔面が一転。

その奥で色白の顔がみるみる赤く染まっていって、息をのんだ。


え、なにそのかわいい反応。いつもふてぶてしいくせに…!



「なに、本当に本気で好きだったの?なんで?」


嘘だとかは思ってなかったけど、でも。


ショーマを押しのけて身を乗り出してしまう。だって寧音のこんな表情はじめて見たんだもん。さすがに興味がわいてしまう。

好きになるほど会話してた?知らないところで距離を縮めていたのかな。それにしては、ふみとはそんな様子はない。



「は……初恋、なの」


赤いくちびるからこぼれた小さく震えた声。



「え、初恋?寧音ってピカロ好きだったっけ」

「そんなこと言ってないよ!」

「じゃあなに、ついこのまえ初めて恋をしたってこと?さすがにそれはコレがかわいそうでしょ」


コレ、と隣の青髪を肘で突く。だってなんか腹立つんだもん。


「そうじゃなくって。……11年前、音彩お姉ちゃんの中学の合唱祭を聴きに行ったとき、一緒に連弾してたのが久野ふみとだったの」