演奏が終わったふたりの立ち上がるタイミングもお辞儀の秒数までも同じな姿を見て、すぐさま席を立った。
「わたしは帰るから、…あとはがんばって」
「ちょ、待てよアリス、なんだよこれ…寧音がピアノ弾けるなんて聞いたことねーんだけど」
それはきっと、寧音がわたしのために言わなかったんだ。
なんて言ったら絶対否定されるんだろうけど。
「じゃあこれから聞けばいい。寧音のピアノ、すごいよ」
自分が幼いころからつづけていて、愛していること。評価されてきたこと。
それを彼氏に言わないって…そんな気の遣われかたをされるなら、名前を呼ばないとか、演奏会に誘ってこないとか、そういうことのほうに遣ってほしい。
散々な1日だった。
個の音が乱雑に重なったロックの演奏。
そのあとの4分間のピアノ。
久しぶりに聴いた生の美しい音色。
やっぱり、もう二度と聴きたくない。
「アリス」
ホールを出てしばらく歩いているとふみとが駆け寄ってきた。
「…ひとりになりたいから出てきたのに」
ふつう察するでしょ。もしかしてわざと?
「感想言い合いたいし」
「それはふみとの勝手でしょう」
「それを言うなら連れてっておいてひとりになりたいのもアリスの勝手だろ」
何その言い草。ああいえばこういう。面倒くさいなあ。
こっちもわざとらしくため息を吐くと苦笑を返された。ちょっとは腹立ったかな?



