世界でいちばん 不本意な「好き」



戻れないなら、もうあきらめたらいい。言いかたが悪いけど、すごく目障りだ。


ショーマが踏まれて振り回されてボロボロになったギターのボディを撫でた。

わたしはこれ以上何も言いたくなくてくちびるを内側に巻き込む。



「しかたなくね?追いかけるとかしたことねーし」

「…ふみとの服装よりダサいよ」

「え、なにその喩え……」

「ギターだってはじめから弾けたわけじゃないでしょ。やったことないなんて理由にならないからね」


なんでわたしがこんなこと言わないとならないの。

どうでもいいし、恨みたいくらいなのに。


ポケットから演奏会のチケットを出す。


「これ行くから、さっさと切り替えて」

「は、なにこれ」


やっぱり。寧音、ピアノをやってること、ショーマに言ってなかったんだ。


「いいからはやくして。遅れちゃうでしょ」


ふみとの変装もショーマの足踏みもダサい。

だけど一番ダサいのは、いつまでも寧音のことがうらやましいわたしだ。



壊れたギターを担ぎながら終始戸惑った様子のショーマと、「行くことに決めたんだ」となぜか笑いかけてくる久野ふみとを連れて市民会館ホールへ向かう。

すでに何曲か終わっている時間。間に合うかな。

そう思いながらホール内に入るとちょうどこれから寧音たちの出番があることがアナウンスでわかった。