世界でいちばん 不本意な「好き」



こんなに感情をあらわにしたショーマも、自分も、久しぶりだ。


「前のおれってなんだよ」


自覚症状がないふりをするところ、腹が立つ。



「寧音と付き合ってからもへんだし、別れてからは、もっとへん」

「はあ?変って。アリスに何がわかるんだよ」


「だってそうでしょ。前のショーマなら人前で喧嘩なんてしないし人前で人からの誘いを断ったりしない。そもそも誘われるような状況にしない。自分でもそう思ってるから苛立ってるんじゃないの?それなのにこっちにはそれ隠してあやまってきて…なんかよけい腹立つ」


「…あやまらなかったらそれはそれでおこるだろ」

「あたりまえでしょ。嫌味だけじゃなくて、本当に、暇じゃないんだからね」

「わかってるよ。…ごめん」


深く息を吐く。落ち着こう。

こんなの、ショーマだけじゃなく、わたしらしくもない。



「……ギター、壊されてばかみたい」

「…なんだ。本当にアリスの言いたかったこと、それなんじゃん」



ケースにすらもう要れるのが困難なくらい折れ曲がったギター。

ショーマの年の離れたお兄さんが就職するときに譲ってくれたんだって、あの軽薄なショーマがものすごく大事にしていたギター。


前のショーマだったら、あの大事にしているものがあんな姿になるような状況、つくってない。


「寧音のこと、まだ好きなくせに」


本調子じゃないでしょ、ずっと。

前の自分に戻りたいって思ってるのは自分なんじゃないの。