世界でいちばん 不本意な「好き」



東京のど真ん中だったり、観光地だったりしたらおかしくないのかもしれないけれど、此処は有名な地でもない。

ど田舎ではないけど首都からだって離れてる。こんなところに芸能人なんてそうそういない。


「気をつけてくれるのは感謝してるし、アリスに迷惑はかけたくないって思ってるのは本当だけど、でも俺悪いことしてないからね」

「え……」


迷惑だ、とかは本当はどうでもよくて。

悪いことをしているからこそこそしろなんて、思ってもいない。


ふみとは、ぜんぶわかってるけど、みたいな表情で話しを続ける。


「俺さ、高校すげー楽しかった。絶対に卒業するんだって思ってたよ。だけど想像以上に活動がいそがしくなって、それだってありがたいことなのに中途半端な考えばかりしてる自分がかっこ悪くて学校から逃げたんだ」

「……」

「それからとにかく仕事だけしてきたから9年もかかったけど、もう一度、今度こそ卒業したいって思えるようになって。ファンの子やメンバーに背中押してもらってここにいる」



ふみとにとって、その9年は長かったかな。短かったかな。


どちらにしても、わたしなんかじゃ到底過ごせないような密度のある時間を、きっと過ごしてきたんだろう。

目の前に座っているのはわたしなのに、ふみとは、その日々を思い出しながら話しているような遠い目をしていた。


「それで、今はアリスとごはん食べてる」


こっち見てよ。

なんて、そんな感情に近いようなことを思っていたら、彼とやっと目が合った。