世界でいちばん 不本意な「好き」



ショーマはこう言うけどすでに何度も寧音からイヤガラセを受けてる。こいつのせい。

寧音の気持ちもわからなくはないから特に行動してないけど、正直言ってめんどくさい。クラスが分かれてよかった。


「高校最後の1年、仲良くしよーな、アリス」

「……」


──── “アリスのこと、一番に想えなくなった。寧音のこと、好きになった”


そう言った口と同じ口で調子の良いことをぺらぺらぺらぺら…。悪いやつじゃないんだけど、気軽に話したい相手でもない。

適当に返事を返しながら体育館に入ると、すでに整列していた寧音と目が合って、ため息をつきたくなった。



私立・茅羽ヶ埼(ちうがさき)学園は、幼稚園から大学まで付属された大きな学園。

だいたいの人が幼稚園、小等部、中等部からエスカレーターで付属大学まで行き、将来はそこそこの職業に就く。


校長先生が緩い人だからかそこまで厳しい環境でもなく、勉強ができればそれで良しって感じ。

わたしはこの学園に、高等部から所属している。


周りのほとんどがエスカレーターで上がってきた人たちで入学したての頃はけっこう大変だったけど、今じゃ寧音以外とはだいたい仲良くできてると思う。男女問わず、先生とも。


部活は無所属。バイトをしながら寮生活。

特別何かが起きるわけじゃないけれど、汐くんという彼氏もできて、友達もいて、充実しているなって思う。


高校を卒業したら付属大学に入って、無難な会社に就職して、それなりの年齢で結婚して、ふつうに幸せな家庭を築けたらいいなあって。

できればその幸せな家庭は汐くんとつくれたらいいんだけど…うん。がんばらなくちゃ。


とりあえず極力ショーマとは関わらないようにしなくちゃ。寧音とモメるなんてまっぴら。そういうの、めんどくさい。