待ち人、必ず来る。

紙に書かれていた言葉の意味を考える。

待ち人って、自分が待つ人間か、と思い直す。
いや、自分が誰かを待つことは無いだろう。
誰かを待たせるくらいなら、自ら向かう。

「ノアさん、コロッケ半分こしましょう」
「好きにしろ」

メニューを選ぶだけでころころと表情を変える目の前の女を見る。

店のテレビでは、西区の解禁について報じている。
それを見上げた。

戦時の、同僚だった奴の言葉を思い出す。

『毛布だよ、毛布』

俺の眼を綺麗だと言った、死んでしまった同僚の言葉だ。

『毛布?』

酒を呑みながらそれを聞いた。