待ち人、音信なし


水や畑は人間の生命線だ。
領地や金をどれだけ獲ても、サイクルするそれが戻らなければ意味がない。

私たちは失ったものと共に、現実と向き合わなければならなくなった。

――黙祷を 終わります

ハンドルに腕を置いていたノアさんが動く。
ちょうど信号が青に変わった。

車が前進する。

雨は降り続いていた。

調査区域に来て、車を止める。私は降りて、後部座席の鞄を持った。ふいに後ろに気配を感じ、その鞄が取られる。

ノアさんはたまに、猫みたいに足音を消す。

「持ちます」
「いい」

今朝出勤のときと同様、ノアさんはフードを被っていた。