そういえば…
社長の発言に衝撃を受けて落ち込んでいたせいで
冷静になった今、シンプルな疑問を抱いていた事を思い出した。

「ところで私に何をしろと?」

「あれ?言ったつもりだけど?」

「…いえ?」

聞かなかった、と思う。
雰囲気でついて来てしまったし。
だから彼の元へ行ってする仕事って…

「何って、モデル?」

「・・・は?」

数秒フリーズしてから驚いてしまった。
この人は今”モデル”と言ったのは私の聞き間違いではない…はず。

「む、無理無理無理。
 何を考えているんです!?
 こんな私に出来るワケがないッ
 そもそも30歳なんですよ!?
 その業界って10代~20代の世界でしょ!」

興奮のあまり
私にしては珍しく声を張って拒否。

「無理かどうかは俺が決める。
 さぁ着いたよ、降りて」

「え、ちょッ」

またも精一杯の否定も空しく
有無も言わさず強制的に車から降ろされてしまった。

目の前には立派なビル。
彼が働く事務所と立ち上げたブランド会社も
このビル内にあるらしい。