「宮?……大丈夫か?」
 「あ、あぁ…悪い」


 2人は盗作事件の話をしていたが、宮は感情が高ぶりすぎて呆然としてしまっていた。
 剣杜が心配そうに顔を覗き込んできた。


 「で、おまえはその一条とかいう女からは今後どうやって話を聞き出すんだよ。今度はおまえが危ないんじゃないか?」
 「どうとでもなるさ。俺はあの人を抱くつもりはないよ」
 「………せっかく頭がいいんだから、警察とか弁護士とかになった方がよかったんじゃないのか?」 
 「そんな事をしたら違法な事も出来ないし、犯人を殴れないだろ」
 「………おまえ、虹雫の事になると本当におっかねーよな……」


 宮の言葉にギョッとした顔を見せる剣杜だが、少し納得して大きくため息をつきながら、そう言葉をもらすのを聞き、宮は思わず苦笑してしまった。


 すると、スマホがブブブッと通知を知らせた。蜥蜴から預かった携帯だとわかると、すぐに相手を見るためにスマホを開く。
 すると、そこには「一条里枝」という名前が表示されていた。
 宮は考えもしないで、スマホから手を離した。そして、自分のスマホを確認するが、会いたいと思っている相手からは連絡は来ていなかった。

 一条から情報を聞き出したり、蜥蜴と連絡したりと最近は忙しく動いており、虹雫とはなかなか会えていなかった。きっと寂しい思いをさせているはずだ。
 もちろん、自分自身も。

 早く彼女に会わなければ。
 会えなかったお詫びに、何かお土産を買って言って、沢山甘えさせないと。そんな風に考えると、口元が緩む。
 そんな宮を見て、剣杜はすぐに「虹雫の事、考えてただろ?すぐわかるわ」と笑った。
 幼馴染みに隠し事は無理だな、と改めて思ったのだった。