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 「はー………」
 「どうしたんですか、副社長。最近元気がないですね。今も大きなため息をつくなんて」
 

 一条里枝は自分でも気づかないうちに、大きくため息をこぼしてしまったようで、部下に心配されてしまう。一条は「忙しいからかしら。ごめんなさい、元気だから安心して」と返事をしたが、内心ではまたため息をこぼしてしまいそうになっていた。

 それもそのはず。
 バーで出会った雅樹ともう数週間も会えていないのだ。しかも、連絡も帰ってこない。
 やはり、女からホテルに誘うなど、はしたないと思われただろうか。年上の女として、リードした方がいいのかと思っていたが、雅樹の好みではなかったのか。自分の行動で、彼に嫌われてしまった。そう思って、凹んでしまっていた。
 一条は年齢は高いものの、男性からもモテていた。自分から声を掛けた男で、落ちなかった者はいなかった。そのため、こんなにもあっけなく自分から去っていった雅樹が気になって仕方がなかった。見た目も性格も、話し方も全てが一条の好みだった。これで、自分を求めてくれたのならば、最後の恋にして結婚するのもいいな、と幸せな未来を想像した矢先だった。そのため、一条は大きなショックを受けていた。
 一方的に好きになっただけだったのだろうか。雅樹に遊ばれていただけ?いや。ただの飲み友達で終わった関係なのか。
 一条は隠れて小さくため息をついた後、今日何度目になるかわからないぐらい、彼からのメッセージをチェックしたが、相変わらず一条へのメッセージに返信はなかった。