光を掴んだその先に。





「いい?絃ちゃん。いま俺がやったことは、かつて絃織さんの父親が俺や那岐家の全員にやったことだよ」



おやっさんの脇腹からは血が流れ、そのまま畳に横たわる。

回線が切れている───それは助けすら呼べない最悪な状況だった。



「俺はいいヤツなんかじゃないよ絃ちゃん。俺はね、…“那岐”への復讐者だ」



あぁ、これだ。

俺がずっとずっと幼い頃から怯えていたことは。

こうして俺のせいで絃を傷つけおやっさんを傷つけ、天鬼組を苦しめてしまうこと。



『俺のせいで、いつか泣かせちゃうかもしれない。俺のせいで…たくさん苦しい思いをさせちゃうかもしれない』



いつか来るこんな日が、俺は怖くて怖くてたまらなかった。



「剣さんしっかりして…っ、」



銃弾は幸いにも貫通した。

しかし出血が多い。
このまま放っておけば確実に致命傷だ。


こいつは最初から俺本人ではなく、俺の周りを消していくつもりだったのだ。


そして俺に最大の地獄のような苦しみを与えようとしている。



「俺さぁ、絃織さん。残念だけどあんたを殺したかったわけじゃないんだよね」



考えろ、考えろ俺。
いまいちばん最速で絃を救う方法を。

焦るな、焦ったら終わりだ。


この感覚は1度、味わったことがある。


『一緒に死のう、なぁ絃織……、お前だけは俺を見捨ててくれるなよ、』


『俺は…まちがっていたか…?なぁ、絃織…』



正気のない父親。

狂った表情。


『助けて』と叫んだら終わりだと、6歳の俺は必死に声を押し殺していた。