「わ…っ、なぎ、…んっ」
戸惑う私に、ふっと甘く笑った。
ガラス細工に触れるように、微かに震えている手は優しくすべてを包み込んでくれる。
それでも熱い。
熱くて、1度捕まってしまったならば2度と離してくれないくらいに。
「……泣き止んだな」
涙はどうやら止まっていたみたいで。
至近距離で優しく微笑んでくれる顔に、今度はどこか落ち着かない。
恥ずかしくて、照れくさくて、ドキドキして、心臓が止まってしまいそうで、それなのに……うれしい。
ぎゅうっと、その首に腕を回した。
「…これやべえわ」
やばい…?なにがやばいの…?
確かにこんなところ、誰かに見つかったら色々やばいし大変だけど…。
でも───…、
「はなれちゃ…やだ、」
桜子ちゃんのところに戻ったらもっともっと泣いちゃうよ。
だから、ここにいて。
私のことだけ見て…ずっと私のことだけ考えてればいい。
「…可愛すぎるだろ。こんなの赤ん坊とかのレベルじゃねえぞ」
「もう赤ちゃんじゃないよ…っ」
「…あぁ、知ってる」
それは初めて見る顔だった。
思い出を甦らせるものじゃなく、いまの私をまっすぐに見つめてくれる顔。
そんな顔は雅美さんにも桜子ちゃんにも見せていないもの。