もっと別で、もっと近いものだ。

すぐ傍にある温かさを一瞬にしてじわじわ壊してゆくようなもの。



「遅いわね…」


「変ねぇ。いつものスーパーに買い物を頼んだだけなのに」



職員ふたりが心配そうに窓の外を見つめる夕暮れ時。

夏休みになり、子供たちも施設内や庭で遊んでいる中で、夕飯時だというのに揃ってない数人がいた。


それは保育園組の2人と、佳祐だ。



「私が探しに行ってくるっ」


「あっ、絃ちゃん!危ないわよ!」



保母さんの心配も無視。

嫌な予感がするから、今にも駆け付けなければ駄目な気がした。


弟も妹も、佳祐も、きっと泣いてる。



「佳祐っ!ハルくん、なっちゃん!!」


「「お姉ちゃんっ!!」」



まだ5歳のふたりは、涙でぐしょぐしょな顔を歪ませて私を見つめた。

そこはスーパーの裏手。
人があまり通らない暗い場所。



「馬鹿…!なんで来てんだよ…っ!」


「佳祐…!!」



踞るように腹を押さえながらも2人を何とか庇う佳祐は、唇の端から血を流していた。


そんな目の前に影を作る2人の男は、見るからに柄の悪い大人たちだった。

吹かした煙草の煙、腕に覗く刺青。