「じいちゃん、おじいちゃん、絃だよ。お饅頭持ってきたよ」



これからここはどうなっていくのかな。

おじいちゃんがいなくなって、みんなちょっとだけやつれちゃったんだよ。


あとは後継者争いだったりで、しょっちゅう地方からの上層部も押し寄せて来たりして、難しそうな会議が開かれたりね。



「…絃、」



振り向かない私の返事に理解を示した男は、そっと隣に座る。


目の前には優しい顔をしているおじいちゃんの遺影。

極道組織の組長だからもう少し威厳があったほうがいいんじゃないかと意見もあったけど、私がこの写真がいいと指差した。



「那岐、次のお頭になるの…?」


「…どうかな。お前が望むなら考えるよ」



優しい口調は昔を思い出させる。


でもそういうこと言っちゃだめだよ那岐。
そうやって私のために生きなくていいんだよ。

そんなの私だって期待しちゃうし、もっともっと那岐が好きになってしまう。



「私、高校卒業したら海外とかに行こうかな」


「…ここが嫌になったのか」


「ううん、…海外なら狙われないかなって」



そうすれば那岐も那岐の人生を歩けるから。

私のためとか、もう言わない人生。

私が強くなって1人で歩けるようになって、1人で生きれるようになればいいんだ。