『ずっと隠し通すつもりなの…?』


『あの子はもう子供じゃないわ』


『知らないから駄目なの。子供じゃないから駄目なのよ』



姉さんの言葉は、俺の良心という馬鹿げたものでコーティングした皮を1枚1枚剥がすというよりは。

一気にズタズタに切り刻んでしまうような、そんなものだった。


その奥に隠した醜く汚れた何かを見られたみたいで。



「どう考えてもガキじゃねえだろ…」


「え…?那岐…?」



もう、俺もお前もガキじゃない───。


血が繋がっていなくて良かったと。
それでいて、あの幼少期があってよかったと。

こうして触れても許される関係で良かったと。


だがそれは、いつかの俺を容赦なく踏み潰してきそうで。


幼い頃の俺はこいつをどんな目で見ていたかなんて、今となってはもう分からない。

ただこいつがいればいい。

ただ俺だけの光であればいい、そんなものだったように思う。



「…風邪引く。そろそろ戻れ」


「…うん」



もし俺たちが義理の兄妹だと知ったならば、俺が大罪人の息子だと知ったならば。

こいつはきっと俺から離れてゆくだろう。


だから俺は教えたくないのだ。
知られたくないのだ。

お前に、ひとりの男として見て欲しかったから。



「絃織、時間作ってもらって悪いな」


「いえ。おやっさん、それで話って…」


「あぁ、───実はお前に縁談がきている」



そしてそんな繋がりは。

俺たちの絃─いと─は。


だからこそ、第三者に簡単に切られてしまうものでもあった。