やがてゆっくりと身体は離れて、大きな掌が優しく頭を叩いてくれる。
………でもやっぱりセンス悪い。
すると今度、お父さんは那岐へ申し訳なさそうにこめかみを掻いた。
「悪い絃織。今年はアイスケーキ用意できなかった」
「ふっ、わざわざそれを買いに来てたんですか」
「あぁ、おまえ昔から好きだったろう」
これですべてが解決した。
この人があんなにもアイスケーキに拘ってた理由は、那岐のためなんだって。
………いや、なんにも解決されてなくない…?
「あーーー!!ケーキっ!忘れてたぁぁぁ!!」
うっそ!!溶けちゃってない!?
やっばいアイスケーキの存在はお空の彼方に消えてた!!
思わずケーキの隠し場所へ走る……けど。
「………最悪だ……、」
箱を持っただけで分かった。
というより、外側まで染みがじわじわと出てしまっていて。
これはもう“溶けている”の証拠。
「無理して食べなくていいよ那岐…」
「平気だ」
「…お父さんもお腹壊しても知らないよ」
「これはこれで美味いぞ。なぁ、絃織」
「はい」と、その人は微笑んだ。
その夜は大広間に上層部も揃って、お父さんが久しぶりに戻って来たことで宴会が開かれた。
それでも私にとってはお父さんもだけど、那岐が主役なのだが。



