「…おとーー……さん……、」
初めて口に出した、その呼び名。
他人事のように今まで聞いてきた名前。
お父さんお父さんって、すれ違う子供の笑顔をいつも見ていた私。
どういう気持ちでその名前を口に出してるんだろう?って。
どうしてそんなに嬉しそうなんだろうって、分からなかったけど。
「おとうさん、…おとうさん…?」
「あぁ、昔はパパって呼んでたんだぞ」
「…パパ……、えへへ……お父さんがいいな…」
それは照れ笑い。
照れ隠しのような、隠すように笑う声が漏れてしまった。
嬉しいのだ、これは。
すっごく嬉しい。
聞きたいことはたくさんあったはずなのに、こうして抱きしめられて返事が返ってくるだけで全部がどうでも良くなっちゃう。
「正義感が強いところは美鶴に似ちまったか」
「あのね、剣道だけは得意なんだよ。那岐も褒めてくれるの」
「はは、俺も剣道は好きだったぞ。そこは俺にも似たんだな」
不思議だ。
ずっと会っていなかったのに、こんなにも普通に話せてしまう。
そして話すことがこれほどなく楽しい。
あなた達の子供なんだね、私は。
天鬼 剣と、天鬼 美鶴の。
「他も褒めてやらないか、絃織」
「褒めてますよ。ただ、厳しくしていいとおやっさんも言ってたじゃないですか」
そんな2人はどこか親子のようにも見えた。



