駅前にて、ひとつのケーキ屋さんの前にサングラスをかけた派手なスーツ姿の男は店員に詰め寄っていた。
良かったぁ…。
駅前はきっと人がたくさん来るだろうからって、商店街のケーキ屋を選んで正解。
「アイスケーキではなく他のものなら…」
「それじゃないと駄目なんだ」
「大変申し訳ございません…」
どうにもアイスケーキに拘ってるらしい、その人。
確かにここのアイスケーキは美味しいって評判だった。
でもきっと私が購入したお店だって負けてないはずだ。
こういうのは気持ちが一番だもんっ!
「…ごめんねおじさん」
私はアイスケーキゲットしちゃったよ───と、小さな声でつぶやいて通りすぎる。
………というか。
ずっと気になってたけど、なにその色のスーツ……ワインレッドのギンガムチェックって…。
「センスわるぅ……」
それにそのハットも……。
アメリカ?ここはアメリカなの?
おじさんカウボーイなの?ってくらい、日本人が被るにはちょっとクセがすごい。
「ねぇ、あのおじさんヤバくない?」
「ああいうのはあまり見ちゃ駄目だよね」
ほら、若い女の子たちにクスクス笑われてる…。
もし自分のお父さんとかがああいうファッションしてたら、極力一緒に歩きたくない。
靴もすっごい尖っちゃってるしさぁ…。



