光を掴んだその先に。





「絃!!今日はイケメン執事は来るんでしょーね?」


「ごめん当分こない!じゃあまた来週っ!」


「ちょっと絃っ!」



下校のチャイムが校舎に響いて、昇降口まで走った。

ローファーに履き替えながら校門前を見れば、見慣れた黒ベンツを発見。


どうやら今日は渋滞にはまらなかったみたいだ。



「お嬢!今日もお疲れ───」


「今日は電車で帰るから!じゃっ!」


「って、えええお嬢…っ!?!?」



校門前、当たり前のように駐車されている目立つ車の前をタタタタタッと通りすぎる。



「待ってくださいお嬢ーーー!!」



案の定あたふたしている俊吾の声が追いかけてくるけど、どうせ車を置いていくことはできないはずだ。


しばらくすれば声は止まった。

というより、私の全力疾走で遠退いたのだろう。



「ごめん俊吾っ」



でも今日だけはどうしても寄らなきゃいけない場所があるのっ!



「このアイスケーキ、ホールで1つくださいっ!」


「サイズはどうされますか?」


「いちばん大きいサイズでお願いします!」



母親とケーキを選んでいる男の子よりも、きっと私のほうが瞳をキラキラ輝かせているに違いない。

若い店員さんはクスクス優しい笑みをこぼしながら「かしこまりました」と、ガラスケースを開けた。