「そうよ、思い出すと腹立たしい!今朝、翔のおばさんに帰るって挨拶に行ったときよ。この人ホテルからずーっと不機嫌で、その怖い顔を見せたらおばさんが気にしてしまうと思って病院へ入る前に翔の顔をペシペシ両手で叩いたら本気で怒るし。しかもおばさんの病室へ入るなり挨拶もそこそこに病院から駆けて出て行ってしまって。なんだったの?急にいなくなって」
「あー、母さんの病室に入ったら、ミカンが置いてあったんだよ」
「だから?ミカンがあると飛び出して行くわけ?」
「分かったんだよ、ミカンで。そうだろ、結月」
私はコクリと頷く。
「なによ、二人だけの世界に入ってるんじゃないわよ」



