「ふぅぅ。ちょっと待って。顔を上げて、翔。ちゃんと話をするから。ね。顔を上げて」
翔は涙を拭うことなく私を見る。翔の涙を見て胸が締め付けられる。
「私、私ね、翔のお母さんに会いに行った」
「ん」
「お母さんもうすぐ退院できるんだってね、良かったね」
「ああ」
「翔に言わずに突然行ってしまって、ごめんなさい」
「いや、それは、来てくれてありがとう」
「それ、で、ね。長野で、ね。」
「長野で、なに?」
「長野で、翔を見かけた」
「えっ?えっ?いつ?どこで?」
翔が急に慌てだした。
そりゃそうだよね、どのシーンを見られてもいつも隣には岡崎先輩が居たんだから。



