駅のホームに下りの電車が到着し、電車を降りた人たちが私と男の脇を素通りしていく。
その人混みの中から聞き覚えのある声がした。
「おい、何やってんだよ!」
怒鳴り声とともに私の腕を掴んでいた男が突き飛ばされた。
「んあ?誰だよ、てめー ふざけてんじゃねーぞ」
「何やってんだ、って言ってんだよ。こいつに触ってんじゃねーよ」
・・・翔。どうして?どうしてここに翔が居るの?
「翔!翔!翔!」
私は翔に飛びついた。
その男はそれを見て、「誘ってんじゃねーぞ、ばか女」と私に罵声を浴びせ、人混みに紛れてホームから立ち去った。
翔がその男を追いかけて行きそうだったから、ギュッと翔の体を強く抱いて
「行かないで」と呟いた。



