病室から廊下に出たとき堪えていた涙が溢れてた。

翔のお母さんに嘘をついた。

いや、嘘ではついていないのかも知れないけど私が誰なのか言うことができなかった。

挨拶も何もできなかった。

私は手で涙をゴシゴシ拭いて、“もう帰ろう”そう呟いた。

病院の出口でタクシーを待っていると、少し先から翔と岡崎先輩が歩いてくるのが見えた。

翔は凄くイライラしているように見える。

不機嫌そうな顔。

二人はそこに立ち止まり、岡崎先輩が翔に向き合うと、翔の頬に両手を当てて二人の顔が重なった。

咄嗟に私は背中を向けた。

見たくなかった。

そこへタクシーが到着したので、私は二人を避けるようにタクシーに乗り込んだ。