「昨日はそのご家族と息子がお見舞いに来てくれたからこの病室が賑やかになって嬉しかったの。そのご家族のお嬢さんまで一緒に来てくれてね」
そうなんだ。岡崎先輩もここに来て、楽しくおしゃべりして。
それに比べて私って一体なに。
名前も名乗れず、ここに黙って座っているだけ。
洋服の裾を掴んでいた手をさらに強く握った。泣いてはダメ。
「息子がね、今までに見たことが無いくらい明るくて。お隣のご家族がいるのに全然恥ずかしげもなくね、好きな人ができた、って言うの。可愛くて、素直で、放って置けないんですって。一つ下のお嬢さんらしいんだけど、しっかりしていて、時々自分の方が年下なんじゃないかって思う時もあるとかで。そんな事を息子が話してくれるなんて、ここに居た全員が驚いたわ」



