婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 別のお客さんが来た。
 あれ?
 ご近所さんでは見慣れない、小ぎれいな明るい緑の服を着たブロンドの男性だ。
 ご近所さんはお店を営んでいる人が多いので、汚れてもいい服を着ている人が多い。
「ラブレターを書いてもらえるんだって?」
 えっ!
「は、はいっ!もちろんです!えっと、1枚8セインで、2枚目からは5セインになります!追加料金を払っていただければ紙のランクアップもできます!」
 初めてのラブレターの依頼だ!
 やった!
 少しずつメニューを書いたお店で宣伝してもらった効果がでているに違いない!
「へぇ、まとめて何枚か書いてもらった方が得なんだね。じゃぁ、何枚か頼もうかな」
 サラサラの前髪のひと房がさらりと額にかかる。
 うおっ、なんだ、色っぽいな。
 息を飲むようなイケメンじゃないけれど、平均より少し上の容姿を補う色気が半端ない。ぶっちゃけモテそう。
 ラブレターなんて必要?
 違うか、ラブレターっていう小技まで使うからこその色気か?
「そうだなぁ、うん、よし、1通目は『月の女神の誘惑より、僕には君が魅力的だ』」
 ほうっ!情熱的ですな!
「2通目は『どうか、僕を好きだと言ってくれ。それだけで僕は生きていける』」
 なんと、またまた情熱的だよっ!
 と、情熱的なラブレターを一度に20通も頼まれました。
 毎日1通ずつ送るのかな?週に1通ずつかな?どちらにしても、すごい、愛されてるねー。奥様かしら、それとも結婚を申し込もうとしてる人かしら?
 ふふふっ。
「ありがとうございました!」
 うん。やっぱりラブレターはいいね。メニューとちがって、言葉の中に物語がある。どんな主人公たちの愛の物語なんだろうって……想像が広がるわ。

■20

 少し早めの昼食に、ライカさんの食堂へと足を運ぶ。
「いらっしゃい、どうしたの?嬉しそうな顔して」
「ライカさん、ついに、ラブレターを書いてほしいってお客様が来たの!きっと、ライカさんたちが宣伝してくれたおかげよ!ありがとう!」
 ライカさんの顔を見るなり、嬉しくなって声を上げる。
「うふふっ、こちらこそ、メニューのおかげで店の格が上がって見えたのか、」
 ライカさんがそこまで言って、私の耳元で声を潜めて話をつづけた。
「こっそりお忍びの貴族様がいらっしゃったのよ」
 ふえっ!
 お忍びの貴族?