婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 「エドワードの髪と瞳を見ると、蜂蜜をたっぷり入れた紅茶が飲みたくなるわ」って言ったことがあった。
 彼はくすりと笑って、侍女に紅茶を用意させたんだ。もちろん、蜂蜜をたっぷり入れた紅茶を。
 懐かしいなぁ。
 エディの髪の色は、シナモンみたい。……シナモンティーが飲みたくなるわね。紅茶と、シナモンクッキーという組み合わせも捨てがたいわ。
「なぁ、リリィー」
 はっ!
 いけない。別のこと考えてた。
「リリィーの周りで、3S”じゃない”人はどれくらいいる?」
 え?3S男子じゃなくて、3Sじゃない男子?
 おじいさまもお父様も、健康だし、まだ生きてるでしょ?バリバリ働いて、周りに頼りにされてる。もし、貴族じゃなかったとしても、何かしら仕事をしてやっていけると思う。それに、おばあさまやお母様一筋で、愛人を作ったりもしていない。
 執事のセバスやセバスの息子もそうよね。元気だしよく働いてる。今のところ女たらしという話は聞かない。
 エディは……。
 生命力、生活力はある。誠実さはまだ分からないけれど……。分からないんだから、3Sじゃないとも言えない。
 あれ?
 3Sじゃない人?
 ライカさんの店で相席になったおじさんたち……。元気だったし、仕事のお昼休みだって言ってたから仕事もちゃんとしてる。奥さんにラブレターを渡すとかいう話で盛り上がってたから愛妻家なんだよね?
 ……えっと……。
 3Sじゃない男子……社交界の噂では聞く。どこどこ男爵の三男だとか、だれだれ伯爵だとか……ずいぶん女遊びが激しいらしい。それはあくまで噂の中の人物で私の周りの人間じゃない。
「い、ない?」
 私の周り、3S男子しかいないってこと?
「そうだよ、リリィー。3S男子が理想だというならいくらでもいる。俺だってそうだ。リリィー、婚約するか?」
「エディと?」
 エディの紅茶色の瞳は、ずっと私を真っすぐ見ている。
 エディと婚約して結婚したら……。毎日この紅茶色の瞳を見て生活するのね。
 そのたびに紅茶が飲みたくなったら……。
「お腹がたぷんたぷんになっちゃうわ」
「は?お腹?リリィー、大丈夫だ。これでもそれなりに鍛えているから、お腹がたぷたぷになることはないぞ?」
「あ、ごめん、えっと、違うんだ、エディのお腹のことじゃなくて。えっと、そう、紅茶、お茶にしましょう!」