3人目の婚約者が12歳、私が9歳の時、土下座された。
「リリィーごめん。リリィーのことが嫌いなわけじゃないんだ。だけど、どうしても妹のようにしか思えなくて……。僕の心は別の女性に捕らわれてしまった。どうか、婚約を白紙に戻してほしい……」
 3度目の婚約破棄。
 その後、フレリー公爵家三男の心を奪った女性は別の男性と結婚して、三男は失恋。傷心の旅に出たとか出ないとか。

 通常、3度も婚約破棄された令嬢に残った道は、後妻とかロリコンじじぃの餌食なのだが。
 私は公爵家の娘。3度とも、あちらの事情による婚約破棄。
 次の婚約者にと名乗り出る者も多かった。
 だが、そのころから私は恋愛結婚にあこがれるようになった。 
「しばらく婚約はしたくありません」
 と言ったら、お父様は受け入れてくれた。
 まぁ、3度も立て続けに婚約破棄されればねぇ?

 履歴書を書くならこうね。
 0歳  アンドゥール王国第二王子と婚約
 5歳  1度目の婚約破棄
     タズリー公爵家次男と婚約
 7歳  2度目の婚約破棄
     フレリー公爵家三男と婚約
 9歳  3度目の婚約破棄
 10歳 貴族院立女学園に入学
     メイシーと出会い本の貸し借り開始。親友になる
 15歳 貴族院立女学園を卒業
     4度目の婚約を打診され、自力で婚約者を探す宣言をする(今ココ)

 1度目の婚約破棄で学んだこと。病弱な男はだめだ。生命力のある男を選ぶべし。
 2度目の婚約破棄で学んだこと。いつ爵位を剥奪されるかもしれなから、生活力のある男を選ぶべし。
 3度目の婚約破棄で学んだこと。他の女性に目が行く男はだめだ。誠実な男を選ぶべし。
 てなわけで、私、3S男子……生命力、生活力、誠実さのある理想の殿方を見つけに、市井で生活します!

 お父様とお母様が部屋を出て行くのを見送ると、メイシーと顔を見合わせた。
「リリィー様!やりましたね!市井で暮らすなんて、まるで恋愛小説の中のお姫様みたいじゃないですか!」
「そうよね、そうよね!メイシーもそう思うでしょ?素敵な恋愛が待ってるわよね?」
「ええそうですね。もしかするとお忍びでいらっしゃった隣国の王子様と恋に落ちるかもしれませんよ?」
 メイシーがうっとりした顔で目を閉じる。