婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

「気にしなくていいのに。かえって悪いわ。そうだ、じゃぁ、この分何かサービスするね!」
 ライカは、明るい笑顔を見せて厨房に向かった。
 欲がないいい人なんだ……。料理も美味しいし、いい店だよね。ってアルと話をしているうちに、料理が運ばれてきた。
 ランチのパンがサービスで肉パンになっていた。
「ええ、いいの?」
 ライカさんの顔を見ると
「もちろん。うちの肉パンの味も試してもらえてちょうどいいわ!肉パンは持ち帰りもできるからね?」
「本当?じゃぁ、店番しながら食べられるんだね!」
 もし、店が繁盛してきたら……肉パンを昼食にするのもいいかもしれない。
「ああ、そうそう、店がオープンしたんだね。何日か前から花が出てたから。で、何の店なの?」
 はい?
「看板に書いてあるとおりの店……なんだけど……何の店か分かりにくい?」
 『代筆屋 気持ちを文字で伝えます』じゃだめだったかな。『ラブレターを書きます』とはっきり書いたほうがよかったかな?
 私の言葉に、
「お客さんとも、何の店だろうねって気になって話はしてるんだけど……誰も字が読めなくて」
 と、ライカさんが笑った。
 ふおっ!
 字が読めなくて……?
 字が読めなくて、看板の字も読めなくて……何の店か分からなくて……。
 うおーーーーーい!
 客が来るわけないじゃんっ!
 なんてことだ……。
「ライカさん、看板を付け替えるわ!それで、新しい看板見て、何の店か分かるか教えてもらえないかな?」
「いいわよ。クイズみたいで楽しみだわ」
 ランチを急いで食べて店に戻った。
「まさか、看板の”文字”が読めないとは気が付かなかったわ……私としたことが……」
 代読屋が必要だと言ったのは私自身だったのに。
 ロゼッタマノワールが普通に看板に文字が書かれていたので、うっかりしていた。確かにライカさんの食堂の看板は絵だ。
「そうですね、僕も気が付きませんでした……」
 当たり前のように文字が読めるから、読めないとどういうことが起きるのかっていう想像ができなかった。
 アルと二人で、看板の絵をどうするのか考える。紙にペンで文字を書いている絵でいいだろうか。
 ああでもないこうでもないといくつかデザインを考えているうちに、あっという間に時間が終わってしまった。
 ロゼッタマノワールに重たい足取りで戻る。