婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

「ひゃっ!」
 どうやら、ドアの隙間から庭をのぞいていた私に気が付かなかったようだ。
 2度目のラッキースケベ……あわわっ。
「リリィー!いつからそこに!」
 ずっと隠れて稽古を見てました……って、ストーカーか!って思われそうだ……言えない。
 へらりと笑って誤魔化す……。
「ああ、ごめん、稽古に集中してて、もしかしてお昼の時間?呼びに来てくれたの?キッチンで待ってて、水浴びして着替えるから!」
 お、旨く誤魔化せた。って、え?もうお昼?
 私、どれだけアルのこと見てたんだっての!いやいや、ほら、珍しいもの見たからだよね?普段見られないものだし、将来小説を書くときのためにさ、目に焼き付け解くのさ。それだけのことさ。……。
 キッチンの椅子に腰かけてアルを待つ。
「おまたせ、リリィー。今から昼食もらってくるよ」
 階段へ足を向けるアルを引き留める。
「待って!」
 代筆屋開店から3日。
 お客さんが来るのを今か今かとドキドキして待っていた。
 上手な字が書けるようにと、紙に文字の練習をしたり、いらっしゃいませとか挨拶の練習もしていた。
 昨日までの3日間は、店を離れている間にお客さんが来るといけない!と、ロゼッタマノワールから昼食を運んでここで食べていた。
 そう、3日間ずっと店に籠ってアルと二人で過ごしていたのだ。
 いったい私は何をしていたのだろうか!客も大切だけど、そもそも私が市井に来たのは店を繁盛させるためじゃない!
 3S男子をゲットするのが目的だ!
 店に籠って、来もしない客を待って毎日過ごしてどうするっていうのだ!
 ふんっ!
 街に出るのだ!
「アル、今日は街でお昼を食べましょう!」

■10

「いらっしゃい、今日は何にする?」
 店内に入ると、ライカさんが早速席に案内してくれた。今日はまだ時間が早めだからなのか相席にはならなかった。
「果実水とランチを二つずつ」
 そう言って、テーブルの上に大銅貨を4枚出す。うん、今日はちゃんと金貨じゃないお金を持ってきたの。
 それから、つけにしてもらってあった前回の分も忘れずに持ってきた。
「ありがとう、今おつりを用意するわね」
 ライカさんが、エプロンのポケットに手を突っ込んだ。
「あ、おつりはいいわ!つけてもらったお礼というか、おわびというか……この間は本当に助かったので……」