婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋

 アルのベッドもずいぶん大きくて布団も柔らかそうだったなぁ。
 あれ用意したの、公爵家かしら?だとしたら、護衛に対してずいぶん大盤振る舞いよね?
 子爵令嬢のメイシーでさえ、私のベッドは特別に柔らかくてうらやましぃって何度も言ってるし。
 アルって、ただの護衛だよね?それともメイシーみたいに貴族かな?家を継がない貴族の次男や三男が騎士になるのはよくあることだし。
 それともあのベッドには、高貴な人があそこに寝る可能性も想定してる?
 高貴な人って誰?
 私?
 え?
「私が、アルのベッドに寝るの?」
 自分の考えにびっくりして上半身を起こす。
 昔読んだ小説の一説を思い出す。
 シングルベッドに愛する二人が身を寄せて寝るシーンだ。
 あわわっ。
 ぶんぶんと頭を大きく振って、頭の中に浮かんだ想像をかき消す。
 そうよ、シングルベッドよね。わざわざ事前に大きなベッドを用意してから恋を始めるなんて小説には出てきたことないわ。

「リリィーお嬢様、本日は午後3時よりダンスのレッスンです。それまでにはお戻りください」
 ロッテンさんが、朝食後に今日の予定を伝えて来た。うへー、ダンスの練習か。でも、それまでは自由なんだよね!代筆屋の開店準備頑張ろう!
 昨日ひらめいたのよね!ラブレターを代筆しつつ、どんな出会いでどんな風に恋して、どうなったかって話を聞いたらいいんじゃない?ってさ。
 そうしたら、私の恋の参考になるし、小説家になった時のネタの参考にもなるよね!うふふ。楽しみ!
「じゃぁ、メイシー行きましょう!」
「メイシーは、ロゼッタマノワールを把握していただく勤めがございます」
 あ、そうなの?大変だなぁ。え?本来は私の仕事だったって?ごめん、メイシー。
 食堂を出て、2階の廊下の突き当りのタペストリーをめくり、ドアを開ける。
「あわっ」
「はっ」
 上半身裸のアルの姿がそこにはあった。
 適度に日に焼けて健康そうな肌色。
 鍛え上げられた胸板。胸毛はなくてつるつるしてる。
「リリィ!ごめん、今、着替えようと……」
 アルは、慌ててクローゼットにつるしてあるシャツの一つを手に取って、部屋の奥へと距離を取った。
「これが、小説でよくある、ラッキースケベってやつか……」
 男女が逆な気もするが、実際にそんなラッキーなことあるかぁ!とか思ってた私を許してほしい。
 ある。