なにより気がかりなのは、あの宣戦布告するような不敵な笑みだ。

 まるで、エディからロキースを奪うことなんて簡単だと言っているようだった。

 でも、彼女は言っていたのだ。獣人は生涯でたった一度だけ恋をする、と。

「つまり、ロキースは僕にしか恋をしないということ。じゃあなぜ、ルタが身代わりになれるんだ……?」

 人間と違い、魔獣の恋は盲目的である。

 そんな彼らが恋した相手に取って代わることなんて、可能なのだろうか。

「あぁ、それね。僕なら説明出来るかも」

「ミハウが?」

「うん。おばあちゃんがね、ずっと昔に言っていたんだよ。ヴィリニュスの鍵の秘密を」

「ヴィリニュスの鍵の、秘密……?」