愛しのルーシスにキャッキャと手を振るリディアに、エディはますます混乱した。

 彼女は見えていないのだろうか、ロキースのあの顔を。気づいていないのだろうか、あの怒気を。

 エディは反射的に立ち上がった。

(これは、逃げるしかない……!)

 だって、怖すぎる。なんだかとっても、怖くて仕方がない。

 本能が逃げろと警鐘を鳴らしている。最大限の音量で。

(さっきまでの、触れられるのが怖いとかそういう次元じゃない!)

 熊だ。あれは、まごうことなき熊。

 今までずっと、エディの前では可愛らしくておとなしい姿しか見せていなかった彼は、今ようやく、その本性を現したらしい。