ずっと願っていた夢に一歩近づく。


今まで吐き気がするほど失敗してきた古着屋のバイト面接も、ナカモトでの失態も、三年目の破れた恋も、チバのその一言で全て流れていった。

渦を描いて

『除菌・殺菌・抗菌』

の作用を施して。



「すぐに答えは出さなくていい。試しに働いてみて肌に合わなければ――」

「やります!」

僕は右手を小学生みたいにビシッと挙げ、目をうるませ叫んだ。


今僕の中では、長年起動していなかった(おそらく、ポジティブを司る部分の)脳では、きらびやかな未来が勝手に一人歩きをし始めた。

捕らぬ狸の皮算用?

はっ!

ならば取ってしまえ!

タヌキでもキツネでもウサギでもネズミでも。


剥いでしまえー!




早くて来年

店舗は小さいけど

下北沢のマックの先


店の名前は“GOGO”(ゴゴ)


「健太ぁ!」

「はい!」

「古着界のてっぺん目指すぜぇ! ゴーゴーだ!」

「はい!」

「夕陽に向かって走るぜ!」


「チバさん! いま夜中の1時過ぎです!」

「よーし、じゃああのお月様に向かって走る!」

「はいいいいいー!!!!!」




僕の中で恐れが弾けた。