継承権を放棄して公爵となったといっても、王子は王子。慣れている。緊張と空腹で心に嵐を抱える私を上手に導いてくれた。 宮廷にいた頃はこちらが頭を下げていたのに、とても恭しく相手をされる。私は、今や、国王陛下の義理の妹になってしまったのだ。 それより、もう、食べたいのですけど……! 「イーリス」 「王妃様!」 いちばん会いたかった人が声をかけてくれた。 「馬鹿ね。もう王妃じゃないのよ」 「あ……王太后様!」 「そうね。元気だった? イーリス」 元王妃が優しく微笑み、私の頬を撫でてくれた。