可愛いイーリスが城を去った。 そしてすっかり寂しくなった毎日に、鮮烈な秋の風が吹き抜けた。 可憐なイーリスと戦争嫌いなヨハンがいなくなるのを待って、決行したに違いなかった。 息子である王太子エイベルがクーデターを起こした。 こうなるような気はしていた。エイベルはヨハンと違い、野心に溢れていた。 そして満を持して、国政そっちのけ色狂い国王に国民の不満が爆発したのだ。 燻っていた火と油がついに混ざり、燃え上がった。