「いい夫婦です」 なんの茶番だ。 「もちろんです。弟はあれでいて繊細なところもありますので、妻の心情も手取り足取り大切に扱う事でしょう。そんな大切にされている娘に会いたいはずです、レントリ卿」 「……いえ、特に急いではおりませんが」 「人生は短い。あなたには愛娘の幸せな顔を眺めてのんびりと過ごす無為の時間が必要です」 「殿下。私を追い払いたいのですか?」 冷酷な笑みを浮かべ、王太子エイベルの化けの皮が剥がれた。