ぴったりくっついたまま王子が私の髪を撫でて、撫でて、撫でまくる。 それから甘い声で囁いた。 「ねえ、イーリス。返事をしてよ」 「……っ」 そんなの、決まってる。 でも頭が燃えたみたいにパツパツして、口が動かない。 「ぷるぷるしてるね」 「……!」 「ああ……最近はケーキを食べていないから、元気が出ないんだね」 違う! でも、ケーキはそろそろ食べたい。 すると突然、王子が切なそうに眉を顰めた。 「実は、城から連れて行く使用人のひとりが、クロードなんだ」