「あの髪がいいですね。薄すぎず濃すぎず、硬すぎず柔らかすぎず、長すぎず」 嫁ぐ前、熱い恋に身を焦がした事を、ずっと忘れていた。 結婚が決まって、泣き喚いて拒み、修道院に入れと脅され、恋人の伯爵を投獄すると脅され、あの人の身の安全を取り付けてこの国に嫁いできた。 「歩くだけで弾むのですよね。そして風にたゆたう、真綿のような軽さ」 なぜなら私は、姫だったから。 私はお人形。 アレクサンドラという少女の心は、あちらに置いてきてしまった。 「結んでよし、解いてよし、撫でてよし梳かしてもよし」