「王妃様! 虫歯のうつるような事はしていません!」 「あなたは黙っていなさい」 「僕に虫歯はない」 「私が心配しているのは口の中のばい菌じゃあないのよ」 「……」 恐い! 両親は仲がよくて、私もあまり怒られた事がない。 喧嘩なんて、見てるだけでも雷より恐ろしい。 私は壁にはりついて、震えた。 「母上。この際だからハッキリ申し上げますが、僕は芸術を愛しているのであって、画家や踊り子や歌い手と手あたり次第に戯れているわけではありません。父上と混同なさるのはいい加減やめてください」