出払っていた理性を何とかかき集めて、東から離れる。一旦食事を再開して気持ちを落ち着ける。

すると、スマホが震える音がした。リビングテーブルに置きっぱなしだった自分のスマホを見に行くが、反応していない。

「たぶん東のだ」そう伝えると東はスマホを探しに席を立った。
バッグの中からそれを探し当てて、出てもいいかと俺に確認してから出る。律儀な所がまた可愛い。

「もしもし進藤?」

しかしその第一声に、出てもいいと許可したことを後悔する。

このタイミングで進藤…何かを察したか。

「…え?デート⁉︎明日?進藤と?」

小声で話していた東の声が急に大きくなる。

ガタッ!思わず立ち上がる。

デートなんてさせてたまるか。
廊下へ続くドアの前で電話している東からスマホを取り上げて、後ろから片腕で抱きしめる。

「…進藤か?悪いが東は明日俺とデートだ。残念だったな」

進藤に言ってやる。

「…え⁉︎え⁉︎部長、俺とデートって…え⁉︎そんな話して…!」

かなり動揺している東がまあまあ大きい声で訂正を入れようとするので抱き締めている手の方で口を塞いでやった。

諦めろ、と電話を切ったが、すぐに掛け直してきた進藤にさらに追い討ちをかけ、その後の電話には出てやらなかった。