そう思って東に明日の出張で必要な資料の修正を朝イチで頼もうと思っていた。仕事が忙しければ進藤も無理に東を連れ出したりしないだろうと踏んだからだ。
…俺は東のこととなると、本当に余裕がない。自嘲気味に笑う。

ところが東のデスクに行くと、斎藤が東はさっき進藤に連れて行かれたと言う。
…やられた。ひと足遅かった。どこに行ったかまではわからないというので、必死に考える。もうすぐミーティングも始まるから外に出るということはないだろう。だとすれば、社内で人に聞かれたくない話をする時に使う部屋。
…第3会議室か資料室だ。会議室は事前に使用許可を取らないと使えないから、おそらくは資料室。
嫌な予感のする胸を押さえて急いで資料室に向かう。

資料室のドアを開けて「…東、いるか?」
そう問えば、「…はっはい!」東の声がした。
…良かった、ここだった…
声のする方へ向かうと、進藤の背中が見えた。
東はおそらく進藤と壁に挟まれている。

「…進藤、何をしている?」

「…いや、別に」

そう言うと同時に進藤がこちらを向き、東が見える。
…進藤に、何をされた?
怒りと焦りで身体が沸騰する。余裕がない。

「東に頼みたい仕事がある。一緒に来てくれ」

そう言って東の手を引き進藤から引き離す。