「ねえさま、愛しています」。
今日もまたその言葉を最後に夢から覚めたルリア・シューレベルトは、今が転生した後の世界であることを確認する。
ルリアには前世の記憶がある。義理のきょうだいは婚姻できない世界で、それに構わずに一途に自分を慕う義弟を冷たく突き放し続けた記憶だ。その記憶は色濃く、未練のように毎日夢としてあらわれる。
そんなある日、慈善家の父が、将来有望な若者を引き取ると言った。前世は違う理由でだったが、また自分に義弟ができるのかと、前世の記憶が頭を掠める。
そして連れてこられたのは、前世の義弟の生まれ変わりだった。レイと呼ばれる彼に記憶があるのかわからず、ぎこちない対応をしてしまうルリア。父は突然できた弟に戸惑っていると解釈してくれたが、レイはどこか傷ついたような、それでいて当然だというような顔をする。そのような空気では歓迎の言葉も上滑りしてしまい、二人の間には微妙な溝ができてしまう。